びんごトピックス  2001年9月20日号


池田糖化工業がGABA(ギャバ)を含有食品開発

食品素材メーカーの池田糖化工業(株)(福山市桜馬場町2-28、資本金四億七百九十四万円、水之上禎男社長、TEL0849・21・3141)はこのほど、アミノ酸の一種で血圧降下作用のあるGABA(ギャバ、γ―アミノ酪酸)を大量に含んだ発酵大豆食品を開発、十月末をめどに食品メーカー向けに販売できるよう量産の準備を進めている。
γ―アミノ酪酸は人間など哺乳動物の小脳などに存在し、抑制性神経伝達物質として働く物質で、血圧降下作用の他にも精神安定などに効果があり、日本では脳血流改善に伴う医薬品として承認されている。インドネシアの発酵大豆食品で、日本の納豆のような感覚で食べられている「テンペ」に着目した同社は、大豆に麹菌の一種を加えて発酵させる際、酸素がある状態とない状態の二段階で発酵させることで、テンペ内のGABA含有量を増大させることをつきとめ、三月末に立命館大学で開かれた日本農芸化学会で発表、特許も出願中。
開発した発酵大豆には、百g中にGABA千二百mg以上が含まれるほか、植物性タンパク質、ビタミンも豊富で、骨粗しょう症予防や美容に役立つイソフラボンなども含まれているという。健康食品としてテンペが注目され始めた十五年程前、商品化した企業もあったが、ベジタリアンなど確実な市場のあったアメリカと違い、日本では市場が拡大しなかったという。今回開発した大豆発酵食品は、健康食品ブームの中でGABA市場を引っ張ってきた発芽玄米の百倍を含む上、風味やコクもあるため、飲料や錠剤など栄養補助食品メーカーや、クッキー、ヨーグルトなど一般の食品メーカーから反響があるという。商品は現在粉末、ペースト、抽出エキスの三種を計画、現在は十月末からの粉末の販売を目指し、量産体制を整えている。
五月に東京ビッグサイトで三日間開かれた、食品業界の展示会「ifia(アイフィア)JAPAN2001」に出展、数十社から話があり、手応えを感じたという同社研究室の青木秀之係長は「話題のGABAを大量に含む当社の発酵大豆食品には、良い風味、味の幅、コク味があり、利用範囲が広い」とPRしている。


福山のメックがコンパクトな簡易メカ研究開発

産業機械開発・設計の(株)メック(福山市多治米町4-12-6、信野博文社長、TEL0849・54・7818)は、昨年開発に成功して、現在特許出願中の、搬送用ロボットの改良を進め、応用範囲を広げている。
同社が研究開発した搬送用ロボットは、多軸・間接がない直交型でありながら複数の動きを可能にしたもので、コンパクト設計ながら二十キロ、オーダーによっては二百キロまでの荷搬を可能とした。現在五十キロの荷搬可能なロボット二台がシャープ福山工場の半導体装置生産ラインに採用されているほか、一般に工場内労働のアウトソーシングやパート化による人件費削減が進む中、さらに単純作業労働に代わるものとして応用分野が広がっている。
同社はさらに、伸縮可能なアームによる複雑な作業遂行、電気配線を整理することによる一層のコンパクト化、台上固定型でなくバッテリー内蔵で、センサーにより障害物を避けながらの自走が可能になるよう研究を進めている。信野社長は「技術的にはクリアしている。実際の使用に関しては一ミリレベルでの正確さが必要となるため、作業精度を上げていきたい」と語る。
そのほか、同社が設計した真空状態での検査や作業工程に対応する大型の真空チャンバーは、地場の優れた溶接、鍛造技術に裏打ちされて大きな強度を誇り、関東からの発注も多い。
サービス業界においてもロボットの活躍が目立つ中で、東京のビル・プール管理会社から研究開発、製作を委託された同社が神辺のソフト会社と研究を進めている、プールの底を掃除するロボットの開発も順調で、試作機の出来次第では量産化も視野に入れているという。十二月頃から開発を本格化させる予定で、特許も出願する。さらに、ベッドから要介護者を車いすに運ぶ「介護ロボット」開発にも興味を示す。様々な業界での応用、導入が可能な汎用ロボット開発に力を入れ、経営の軸を固めていく計画。「日本製の優れた機械が世界中で使われている。これからもロボット産業は飛躍が期待されており、それに応えていくのが本社の使命です」と同社長。
なお、大手自動車メーカーがカーAVメーカーと設立した合弁会社が開発を進める、カー用品の液晶パネル製造装置の設計も同社が担当し、研究を重ねている。


ソフト開発のプリズムが自動車内通信テスター開発

ソフト開発の(株)プリズム(福山市光南町1-10-17、資本金一千万円、塩出幸夫社長)は現在、自動車のエンジン制御やABS、オーディオなどのLAN通信をパソコン上で同時に解析できる機器「Multi LAN Tester」を開発している。
多種のLANで結ばれている車内の通信機器の情報が、正確に伝達されているかどうかをテストするもので、大手自動車部品メーカーなどの開発段階で利用される製品。通信構造の異なるLANを同時に解析できるのが大きな特長。
また自動車内に限らず、医療機器や工業システム内の通信など応用範囲の広いCAN(コントローラエリアネットワーク)を同時に解析できる「pCAN」も十月から発売する予定。
同社は平成四年設立、大手自動車メーカーなどを取引先とするソフト開発会社で、これまで超小型、組み込み型のボードコンピュータ、ROMエミュレータ「SENNAシリーズ」や、ROM上のデータを変更、編集するシステムで、レース用自動車にも使われている「ROM SCOPE」など、情報通信、解析機器を中心に開発実績がある。
塩出社長は「多種のLANを同時に解析するソフト開発の技術は当社にしかない。量販できるものではないが、需要を確実に掴みたい」と意欲を話す。


ウエスト砿産が庭園用の装飾石材の新ブランド共同開発

石材商社のウエスト砿産(株)(福山市新涯町1-40-10、小西正之社長、TEL0849・54・1511)は、景観プランナー宇賀知昭氏(同市東深津町1-8-4)と、庭園用装飾石材「Shin羅(しんら)」ブランドを共同開発、六日から販売を開始した。
二年前に同社の展示会を訪れた宇賀氏が「和・洋にとらわれない現代の住宅事情にあった形の庭園にマッチするデザイン」を提案、業者向け展示会で発表したところ評価され、同社が採用した。現在、御影石を素材として、灯りを組み込んだ「石飾灯」六種、組み合わせ自由な花壇ブロック六種、フラワーポット四種の三シリーズを製品化、白、黒、赤など六色を用意。今後は反応を見て門柱や遊具などシリーズを増やし、商品として約百種での展開を目指す。
Shin羅は既に商標登録済みで「石材の可能性を広げる羅針盤」を意味し、庭園を自らコーディネートしたいという消費者の潜在的需要を狙い、個々の庭にあった商品の組み合わせを提案する。
七月に東京で開かれた展示会で参考出品し、二百六十人にアンケートを依頼、四十〜六十歳代の人から好感触を得て現実的な購買層を見出した。今月の七、八日にインテックス大阪で開かれた「関西グランドフェア2001」では演出を重視、一般客の興味を引くと同時に、様々な業界から百部以上の資料請求があったという。
上本圭三常務取締役は「Shin羅の魅力は、ユーザーが自分の価値観にあわせ自由に組み合わせられる点。やすらぎや癒しを求める世代の要求に応えます」と期待、宇賀氏も「発想の仕方で可能性がより広がる商品。自分の中でも楽しんでいるこのブランドで、庭園という空間を演出する際のお手伝いができれば…」と話す。
同社は本格展開する来春に備え販路拡大、代理店募集に力を注ぐ。構内常設展示の準備も進めており、問い合わせにも応じるほか、十一月初めの同社展示会(同所)でも大きくPRする。



こぼれ話  2001年9月20日号

事件続発の対極は一人ひとりの教育

NYの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むという非道なテロ事件が起きた。
米国大統領の声明通り、断固として許されない卑劣な行為だ。しかし自爆行為と知りつつ犯人はどんな考えで犯行に至ったのだろうか。誤解を恐れず想像すれば、犯人を自爆させた根底には愛があったに違いない。犯人は愛の対象を誤り、卑劣な行為に命を投げ出す人間として悪魔の組織に育てられたに違いない。
自らの命を投げ出してまで突っ込む。この事件に日本が犯した戦争の恐ろしさをダブらせた人も多かったのではないか。人間が最大の力を発揮するとき、その根底にあるのは愛だろう。恐ろしさの対極として教育を思う。
株価は十七年前の価格まで暴落し、日本経済が向かっている方向に警鐘を鳴らし続けている。サティ店を備後でも四店(因島、尾道、駅家、笠岡)経営中の大手スーパー、マイカルは株価暴落の翌十四日、銀行支援の道を断たれて民事再生法申請(営業は継続中)した。負債総額一兆七千八四百億円という激震がそごうに続いてまたも流通業界を揺さぶった。
ほかにも国内で起きている恐ろしい犯罪の数々。植物や動物が知らせる環境異変。キレたと言われる子どもたちだからこそ、反抗という形で同化することを拒否している現代の社会システム。
かつてインドの詩人・タゴールが横浜の街でわが子を愛する母親の姿に「なんと品のある国か」と絶賛したという日本も、いつからか下品な国になり下がり、愛よりも目前の利益を優先させる偏重国家に変貌している。次世代を担う子どもたちにさえ、目前の結果(詰め込まれた知識)を最優先で求めてきた。
世界に誇れる国づくりのために国家予算がきっちりと配分され、次世代から感謝される社会。日本がそこに向かって動き出せば、世界の資金は自ずと集まり、株式市場も活況となるに違いない。
では、我々は何をなせばいいのか。尾道出身で神戸市に「師友塾」を開き、五千人の不登校児とともに歩んだ大越俊夫塾長が十月十三日午後一時三十分から尾道国際ホテルで「今をどう生きるか」と題した講演(尾道商工会議所女性会主催)を行う。
大きな組織も結局一人ひとりが支えている。企業、国家の好都合人間を作り出す教育の矛盾が顕在化している。支えている一人ひとりの教育がいかに重要か。これを機に再検討が望まれる。(J)

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