びんごトピックス  2001年12月20日号  表紙写真


総合病院三愛が電子カルテ導入

特定医療法人紅十字会、総合病院三愛(福山市三吉町4-1-15、楢崎幹雄理事長、TEL0849・22・0800)は、今年から本格的に運営を開始した電子カルテで患者の待ち時間を約三分に短縮、このほど実施したアンケートでも好評で、今後もペーパーレスによる業務の効率化や、病院と患者の情報共有を進めていく。
一般的に患者側では、短い診療時間の割に長い待ち時間のせいで来院は一日がかりになる、との考えが多いのが現状。同病院ではこれまで、オンラインでつながれた診察室に、受付登録された患者の情報が伝わる「オーダリングシステム」導入など、待ち時間短縮に努めてきた。併せて昨年から部分導入していた電子カルテの運営を今年八月から本格的に開始。患者一人あたりの待ち時間が約三分と短縮した。診察室では、ドクターがカルテを見ながら話をするこれまでの形と違い、患者もパソコンの画面に出るカルテを常に見ることができるため、診断経過などを把握でき両者の信頼関係を深められる。院内でも職員全員への指示伝達の徹底、診察室、事務所、薬局などへの迅速な情報伝達を可能とした。

全国でも電子カルテ導入を進めているのは十病院程で、広島県では同病院が初の導入。将来は、環境整備が進むインターネットを利用して、患者が自宅からでもカルテを閲覧できるシステム構築や、カルテのプリントアウトによる「マイカルテ」作成で、医者と患者の関係をより密接なものにしながら、ペーパーレスを進める考え。
なお、低コストで内容の充実した人間ドックと早期癌発見の検査を合わせた「癌免疫ドックコース」も先月から開始。総合的に検査することでより客観的な診断を目指す同コース設置は、全国的にも珍しいという。
また同病院では、来院者の子どもが遊ぶ部屋やリラックスできる待合所など、総合的な医療に適した環境作りを進めている。昨年の夏に日経ビジネス誌が実施した全国アンケート調査で、アメニティ部門第一位を獲得した。さらに、保育所や在宅患者の食事宅配、ケアハウスなど、医療や福祉のネットワーク、関連施設が充実しており、中国の河北医科大学付属病院からも研修生が来るなど総合病院としての役割りを生かした活動を行っている。来年からは、ドクターを講師として一般市民を対象に公開講座を予定するなど、さらなる地域との密着を目指す。


久井工業団地にシンレキ工業が進出

県営久井工業団地に舗装材料製造のシンレキ工業(株)(東京都、花形淳一社長)の進出が決まり、十二月十日、午後二時から県庁商工労働部企業誘致担当部長室に、県久井町、進出企業が出席して立地協定を結んだ。
計画によると、同団地内の三千五百三十平方mを取得、鉄骨造り平屋建て五百三十平方mの工場を建設、舗装補修材「エムコール」を製造、中国、四国地方への製品供給拠点として整備する。
平成十四年二月に着工、六月から従業員十人規模で操業を始め、年間一億円の売上高を目指す。総投資額は約一億五千万円を見込んでいる。
今回の久井工業団地進出は、すでに開設している、神奈川、茨城、埼玉、千葉、静岡、宮城、奈良、熊本各県内の事業所(工場)に次ぐもので中国、四国地方の拠点工場として位置付けており、これにより全国的な供給体制が確立されるとしている。アクセスも、山陽自動車道三原・久井ICから北へ六kmの位置にあることも立地を決めた背景となった。
シンレキ工業(株)(東京都大田区蒲田5丁目38-1、資本金二億五千万円)は、昭和三十一年七月設立、舗装材料の製造でシェアを拡大、アスファルト乳剤、特殊常温合材を製造、平成元年には英国EMCOL社と技術提携、アスファルトに特殊樹脂を混ぜた舗装補修材「エムコール」の製造、販売。全国に拠点工場を展開、平成十一年十一月には東広島市西条町大字土与丸111-1に中国営業所を開設、中国地方へのシェア拡大を進めてきた。製品は防草材、カラー舗装材、ボーソーシール、ボーソーシール、ボーソーエムコール等がある。最近の業績は、平成十三年十月期、売上高二十七億一千百万円、従業員百十九人規模、川崎市には中央研究所もある。
久井工業団地は、分譲面積十八万八千九百六十七平方m、立地協定済み面積は九万五千百九十七平方m、今回の分譲面積二千五百三十平方mで、残る分譲面積は九万二百四十平方m、分譲率は五二・二%となった。
立地協定済み企業のうち(株)友和が流通センター、広島県清掃事業協同組合がリサイクル工場を稼働している。


ヤスハラケミカルが生ごみ処理装置に新規参入

粘着・接着用樹脂等のヤスハラケミカル(株)(府中市高木町1080、安原禎二社長)は、同社精製品のリモネン溶液を使った生ごみ処理装置の販売市場に参入する。
環境装置の開発、販売のベンチャー企業、(株)ヴィド(東京都新宿区新宿1-24-12、渡辺順子社長)が開発した、リモネン溶液を活用した溶解・減容式生ごみ処理リサイクルシステム装置「V―BOX」(特許出願中)。ホテル、工場、店舗、病院等から排出される生ごみにリモネン液を定期的に噴霧し、攪拌することで約九時間でゲル化、七〜九割減容される。
この減容物を二次プラントにより炭化処理することで練炭や豆炭に燃料化・活性炭として消臭剤、土壌改良剤、建築資材等のリサイクル商品とすることができる。
リモネンはオレンジの皮から油を採取、精製してリモネン液とするもので、無色透明、レモンやオレンジの芳香がある。香料や、可溶化することで洗浄力、抗菌性の優れた洗浄剤として使用でき、各種マスキング剤として優れた効果を発揮する。また、リモネンによる発泡ポリスチロールのリサイクルも可能でソニーが採用したことでも知られる。
同社では、外国のオレンジの皮から採取する油を輸入、精製して無色透明のリモネンを製造、同社製品の原料として使っているもので、今回のヴィドのV―BOXの開発でリモネンの新しい市場が可能となることから、現在V―BOXを設置して福山市内のホテルから出される生ごみを収集して、実証実験を続けており、近くこのデータを分析して、販売を始めるための具体化を検証する。


寺田鉄工所が焼却する水洗トイレを販売

金属加工、環境機器の(株)寺田鉄工所(福山市新浜町2-4-16、資本金千五百万円、寺田則昭社長、TEL0849・53・0556)は来年一月から、汚物を焼却できる水洗トイレ「スズカネ」の発売を開始する。
これまでの仮設トイレと違い、浄化施設がいらないのが特徴。被災地、登山コース、離島などバキュームカーの通行路確保が困難な場所への設置を見込む。
最大容量七十五lの調整タンクに入った排泄物を十二lごとに、五百五十度の電気ヒーターにより三〜四時間で焼却、炭化させる。五十回分の汚物がスプーン一杯分の灰になる計算で、灰は集塵機に吸収される。発生するガスは七百度の燃焼式脱臭装置を通り排出されるため、臭気はほとんどないという。一日約七十回分の使用が限度の仮設トイレが多い中、スズカネは三十八lの小タイプで一日百二十回分、七十五lの大タイプでは同二百五十回の使用が可能。
さらに使用のたびに十lの水で洗浄、セラミックや炭を組み合わせた濾過材で濾過し、灰の冷却などにも使われながら再利用される。電気で稼働することから、将来は車両、船舶などへの搭載も視野に入れた営業を展開する。
長野県のトイレメーカー、スズカネが数年かけて開発した。製造は寺田鉄工所の関連会社、オフィス机、サーバーラックなど製造の(株)ティー・エス・ディー(福山市新浜町2-1-2、小倉勉社長)が担当。小型で低コストのトイレを実現した。来年には展示会などにも出品する。
同社の寺田雅一取締役環境装置事業部長は「可能性の大きな製品。まずは地元で実績を作りたい」と話している。



こぼれ話  2001年12月20日号

21世紀型経済は福祉と経済の壁に穴

早いもので、未来をイメージさせる「二十一世紀」始めの年が過去の年になろうとしている。
激動の今年。清水寺で揮ごうされた今年の漢字は「戦」。変化するための戦いもあったが、これまで鬱積していたマグマが噴出するような戦いもあり、総じて暗いニュースが多かった。雅子さまご出産とイチローの活躍がなかったら日本の明るいニュースを思い出せる人は少なかったに違いない。
全国の変化が地方でも大きな影響になることを実感した年でもあった。行政改革はしまなみ海道を管理する本州四国連絡橋公団に変容を迫り、地方自治体の負担を一層求める方向にある。永年の夢が実現しそうだと喜んでいた尾道松江自動車道も揺れている。
二十一世紀型という言葉が聞かれた年でもあった。企業と企業、自治体と自治体、組織と組織が横方向に合併、再編する動きが活発になった。しかし規模の大小を問う横方向の派出な変化より、同じ企業の中や発注企業と受注企業の間で起きている縦方向の変化の方が深刻な変化になっている。社内では雇用形態の変化、意思決定経路の変化など。受発注間では見積り先の公募やグローバル化など。いずれもこれまでの数倍のスピードで対応を迫ってくる。
そうした変化に加え、お金とは何か?といった根本的な命題も問われてもいる。低賃金でも、いやボランティアでも動く働き手、非営利目的のNPOの存在。デフレ経済の中で、企業活動の目的そのものが問われてもいる。
最近、障害者や高齢者のための社会福祉法人尾道さつき会(青山澄子理事長)の関係者が集まって忘年会が開かれた。
評議員として出席していたアンデックスの田邊耕造社長が、理事の一人で、まるか尾道中央青果の社長から尾道市社会福祉協議会の会長に転身した富島正路会長を前にあいさつに立ち、「富島さんの顔がにこやかに見える。経済界の集まりでは暗い話ばかり。これほど元気をいただける会合はない。もっと経済界の人を巻き込まなくては…」と感想を話した。
尾道さつき会は広島県の監査担当者も正確さと透明性に驚く県下トップクラスの明瞭組織。こうした会合が心温まる理由は、労いとと褒め合う相互扶助の会話が大半になるためかも知れない。一般の研修会でよく耳にする「明元素言葉」(積極・肯定・陽転=戦略思考=できる、可能だ、頑張ろうなど)同様、励ましや感謝の気持ちがさつき会にはあふれている。
田邊社長も富島会長も広島経済同友会尾道支部の支部長経験者。究極の企業目的が社会貢献にあることを思い起こせば、経済界の人が福祉を理解し、福祉の人が経済を理解することに壁はない。二十一世紀型経済は、意外と身近に残っている壁を取り除いた先に見えてくるのかも知れない。(J)

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