びんごトピックス  2002年1月10日号  表紙写真


尾道浜問屋協同組合が初市開催

北前船の寄港以来、約三百年の伝統を守る尾道浜問屋協同組合(片岡文彰理事長=(株)カタオカ社長、四十六組合員)の初市が五日、尾道市土堂二丁目の住吉神社境内で開かれ、本年の盛業を願った威勢のいい競り声が響いた。
午前九時に組合員や卸業者や約百二十人が集合、佐藤忠男尾道商工会議所会頭も加わって神事を行った後に、組合員の永年勤続従業員二十三人を表彰。その後、境内に並べられたイリコ、ちりめん、するめ、昆布など約七十種類の海産物を前に、杉村政義・競り人(尾道塩干(株)部長)の掛け声で競りが始まった。
「さあ、なんぼ」との声に仲買い人から「二千六百」…「もう一声」といったやり取りで、次々に取り引きが成立。全体で二万六千九百キロが競り落とされ、四千五十二万円の取引となった。取り引きは昨年と比べ数量で約七・二%減、金額で約九・八%減だった。
昨年、煮干(イリコ)業界は一大産地の長崎県がやや不漁だったが、瀬戸内海は海沙の採取禁止、尾道―今治ルートの完成で環境整備が進んだことなどの影響で、前年対比四〇%増の水揚げを記録、全国的に不漁な中で尾道浜問屋協同組合の組合員企業はまずまずの成績だった。
以下主要品の市況。
ちりめん▽上品二千円〜三千五百円/キロ。夏に思うように水揚げがなく九月から不漁が確定的、相場は急上昇となった。
煮干(いりこ)▽上品千円〜二千円/キロ。韓国への輸出などで長崎は在庫一掃、春先の価格が上昇。瀬戸内海がきれいな海になった影響でよく獲れるようになったため、期待がかかる。
剣先するめ輸入物▽二千円〜四千円/キロ。タイ、ベトナム産ともに大不漁だった。国内するめ▽千円〜千五百円/キロ。価格安定、前浜物しか売れなくなった。
昆布(日高産)▽二等三千百円/キロ(高値は上げ浜価格)。昆布(釧路産)▽二等千五百円/キロ(同)。昆布(根室産)▽二等千二百五十円/キロ(同)。昆布(利尻産)▽二等三千八百円/キロ(同)。北海道漁連による今年の生産予想は前年を五%上回る約二万三千トン。しかし日高、釧路地区での流氷接岸、天候不良などの影響で前年を下回る状況。デフレ価格ながら底堅い状況からのスタートで非常に厳しい価格体制となっている。


アイカ中国の本社ビル完成

木工・化粧板等の接着剤や塗床材製造のアイカ中41-4、資本金六千万円、加藤稔也社長)は、本社工場敷地内に新事務所棟の建設工事が完成、十二月二十七日、関係者が出席して竣工式を行った。
完成した事務所棟は、現在の事務所(平屋建て)横に建設したもので規模は、鉄骨造り四階建て、延べ床面積七百二十平方m。一階が本社事務所、二階は技術開発などのスタッフが入る技術課室、三階は食堂などの福利厚生室、四階は約五十人を収容できる会議室。この会議室では同社の親企業アイカ工業の代理店で同社の製造する製品も扱っている企業を集めた商品説明会などにも使う多目的スペース。エレベーター一基も設置、コンピュータ機器等対応の床配線も完備したインテリジェントビル。
設計・施工は(株)竹中工務店広島支店福山営業所、総事業費は約一億五千万円。現在の事務所が手ぜまで老朽化したことから新事務所棟を建設した。旧事務所は一月の初出勤で新事務所に全面移転した後、取り壊し整地され、駐車場等に使う。
同社は、メラミン化粧板・接着剤の大手で、住宅関連部門総合化を展開している、アイカ工業(株)(愛知県春日井郡新川町西堀江2288、資本金九十八億九千百万円、冨田章嗣社長)が、中国・四国・九州地区への拠点工場開設のため昭和四十三年七月、本社内に現地法人として設立した。工場の場所は国道二号沿いの敷地約八千四百平方m、工場棟の「AICA」マークが目立ち広告塔の役目を果たしている。
昭和四十四年二月、現在地に本社所在地を移転し、五月末から操業を始めた。今年で会社設立三十四年目を迎えた。
現況は、ユリア・メラミン樹脂系酢酸ビニル系、水性ビニルウレタン系、合成ゴム系の各接着剤、エポキシ系塗床材を製造、平成十二年十一月から合板用接着剤フェノール樹脂の製造も始めている。従業員約五十人で、年間製造高二十五億円、安定した操業を続けている。
昭和四十六年三月、当時の通商産業省より製品についてJISK6801、JISK6804の表示許可を取得、平成十年九月、国際標準規格ISO9002、十三年二月にはISO14001の認証を相次いで取得、技術力の高さと製造品の評価を確立している。認証機関は共に(社)日本品質保障機構。次は環境安全に関係する認証取得を目指している。
親企業のアイカ工業は、愛知県内に二工場、福島工場があり、アイカ中国、アイカハリマ工業、アイカ電子、アイカインテリア工業などグループ十社(連結子会社)、平成十三年三月期(単体)売上高七百三十四億三千八百万円、経常利益六十億一千三百万円。連結事業で、化成品二〇%、化粧板三〇%、住器建材三三%、電子一二%。


増収増益を見込みのアヲハタの新社長に多智花宏治氏

アヲハタ(株)(竹原市忠海中町1丁目1-25、資本金六億四千四百万円、清水優社長)は、十二月二十日平成十三年十月期決算を発表した。
売上高は百七十六億八千六百万円で、前期比二・一%増、五期連続の増収。経常利益は六億一千八百万円で、一一・八%減、五期ぶりの減益となった。当期利益は二億九千二百万円で、一二・五倍、期末配当は六円、株主総会は一月三十日開催する
期中では主力のジャムは順調に伸び七・五%増加、調理加工品が缶からレトルトパウチへ移行し粗利益が低下し、利益率が下がった。当期利益の大幅増は、前期に退職給付債務の不足額を特別損失に計上したことの反動。今期は売上高百八十五億円経常利益六億三千万円で増収増益を予想。
東北アヲハタ、芸南食品、忠海食品など九社の連結は売上高二百十四億百万円で、三・七%増。当期利益は三億七千九百万円で三・八倍。今期は売上高二百二十億円、当期利益四億円の増収増益を予想。
なお、十二月二十日の決算発表日に開いた取締役会で、清水優社長が退任し、新社長には多智花宏治常務取締役が昇格する一連の役員人事を内定した。一月三十日の株主総会後に開く取締役会で正式に決める。その他の異動は次のとおり。
常務取締役(取締役)福山二郎、同管理本部長兼経理部長(取締役)若井雄次、常務取締役東京本部長兼営業部長(取締役東京本部長兼営業部長)下広陽一郎、取締役(中島薫商店専務)並木敏孝、監査役(内部監査室長)小田忠義。
退任=芥川哲也(専務)、宮脇勝(取締役)、中島雄一(同)、織田貞雄(監査役)。
新社長に就任する多花宏治氏は香川大学農学部卒、昭和四十一年三月アヲハタ入社、竹原工場長、取締役広島事業部長、常務取締役事業本部長を歴任した。さる十一月一日には竹原商工会議所副会頭に就任している。徳島市出身、昭和十八年七月二日生まれで五十八歳。
同社は家庭用ジャムで三割強のシェア。ジャム類四四%、バスタソースなど調理食品類二九%で二本柱。産業用加工品類一九%、その他八%グループ企業にマヨネーズ、ドレッシング首位のキューピー(株)、(株)中島薫商店がある。



こぼれ話  2002年1月10日号

備後の知的集積を活かす Iネットビジネスに注目

日本電信電話ユーザ協会が発行する先端情報誌「テレコム・フォーラム十一月号」に(株)学習研究社が取り組んでいるインターネット事業「とるモンドットコム」が紹介されており、興味深かった。
「とるモン」の「とる」は学習問題をインターネットを経由して「とる」という意味で、「モン」は「ポケモン」の「モン」といった愛称的な意味。要するに勉強に必要な問題を気軽に販売してくれる自動販売機というのが事業のコンセプト。
具体的には、希望者がインターネットを介して、大手五社の教科書から「何ページから何ページまで」とリクエストすると、「基礎」「標準」「発展」の三段階別に約十五万件の問題データベースから予想問題を自動作成、でき上がった問題集を希望者の電子メールあてに三十分から一時間ほどで返信してくれる。
なかなか好評のようでシステムはさらに進化を続けているという。もちろん有料のサービスでプリペイドカードやクレジットカードによって決済し、取り引きのほとんどがインターネット上で完結する。
注目したいのは、こうしたビジネスモデルは地方に運営会社があってもなんら劣ることがないと思われる点だ。全国一律の学校教育の場合は教科書の作成者や出版社が集まる東京が有利かもしれないが、新験ゼミのベネッセコーポレーションのように岡山本社という例もある。
生涯教育に視点を移せば、地方でも有利な分野がたくさんあるのではなかろうか。いや、備後地域だからこそ、有利な知的集積がきっとあるのではなかろうか。
趣味や娯楽に視野を広げれば、より可能性が高まる。今号のインターネット特集のようにITバブルが崩壊したことと、インターネットビジネスが夢物語だったという失敗談は根底が違う。同一視すると大きな間違いを起こしかねない。安易な取り組みには大きな警鐘となったが、芽を摘む経営ではせっかくの花が開かない。備後地域から育つ小さな芽に今年も注目を続けたい。(J)

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