びんごトピックス  2002年12月1日号 
 
表紙写真


尾道に日本初の観光携帯ナビシステム導入

尾道商工会議所(佐藤忠男会頭)は創立百十周年記念日の十一月二十五日、同所で「尾道観光携帯ナビシステム」の記者発表を行った。
同システムは携帯電話のインターネット機能を使って観光地の現場に表示された番号を打ち込むことで説明文などの情報が得られる日本初のシステム。東北芸術工科大学の竹村真一教授(評論家竹村健一氏の子息)が考案し尾道ニュービジネス懇話会のメンバーなどに提案、会議所と市の双方が協議して導入した。
十二月末にプロトタイプを使って告知目的のイベントを開き、来年三月ごろにコンテンツ約五百件の登録を済ませ、本格稼動させる計画。
システムの導入費用七百万円を会議所が創立百十周年記念事業として負担、運営する市に寄贈した。
利用できるケイタイはドコモ、au、J―フォンなど携帯電話サービス会社を問わず、インターネット接続が可能なモバイル端末どれでも対応する。アドレスはhttp://www.onomichi.ne.jp/~navi/
接続はアドレス入力のほか、携帯電話のソケットに差し込むスティックでの自動接続ができ、まちなかの観光案内コーナーで簡単にアクセスできるようにする。またドコモのサービス「すぐメル」でもma3宛てメールの送信で当面接続できる。
観光現場で三桁の番号を表示するために石を加工したふくろう像をシンボルとして置き、その台に番号を表示する。また観光拠点で配布するガイドパンフに使用方法や番号の入った地図を掲載する予定。
観光客は同サイトにアクセスした後、案内番号を入力すれば、画像を含む目的の情報を入手できるほか、立ち寄った思い出に感想文などを登録することもできる。
また、感想を票として投票する機能「気持ち通貨」では画面上に表示される観光資源のハート型図形のサイズが投票数に応じて大きくなったりもする。そのほか自分の居場所を中心にしたマップが表示される「自己中マップ」機能、見ている風景を有名画家の絵で紹介する機能なども備える。
実演しながら説明した竹村教授は「まち全体を博物館にするどこでも博物館の発想です。たくさんある観光資源に説明看板を付けると看板だらけで景観を破壊します。またインターネットでは書き換えが簡単で旬の情報を提供できます。情報に属人性(顔)を持たせ、双方向で楽しむこともできる」と多様なメリットを強調した。
今後は市の観光文化課施設係を中心に運営方法を練り、登録実務や情報監査を行う組織を立上げ、ビジネス利用などの可能性も探る。


尾道自動車学校が向東町へ移転

(株)広島県尾道自動車学校(御調郡向島町5531、資本金一千万円、半田孝治社長)が、尾道市向東町8893-1に建設していた新しい自動車学校の校舎やコースが完成、十一月十三日付けで本店移転登記し、同二十八日には新校舎に関係者や亀田良一尾道市長ら来賓が出席して落成式を行い、新しい施設を披露した。
尾道地域で唯一の自動車運転免許教習所、公認・尾道自動車学校の新しい施設は、敷地一万五千九百十三平方mに、最新の基準で設けられたコースと鉄骨造り二階建て、延べ床面積千二百七十八平方mの教室・事務所の入る校舎棟。
校舎棟は、一階にロビー、待合室、事務所等を設け、二階に初講室やシュミレーター教室、普通教室、受講生の託児室等を備えている。一階から二階には階段のほか備後地方の自動車学校では初めてエレベーターを設置し、高齢者や障害者に配慮したバリアフリー化した設備が施されているのが特徴。
コースは大型二種などの教習やクレーンなど特殊車両免許の取得にも対応できる体制を整備する。
施設の設計は加土建築設計事務所、施工は(株)堀田組。
尾道自動車学校は、昭和三十九年三月、県内十番目の公認自動車教習所として認可され、これまでに約五万七千五十人の卒業生を送り出している。教習車両は普通車二十八台、自動二輪車十四台を所有している。
専務取締役設置者代行の亀田康徳氏が運営の責任者として常駐し、平石守校長と指導員十六人、事務職員など三十人が在籍している。
新校舎完成を機に開かれた学校を目指して、小学生や高齢者を対象にした交通安全教室の開催など地域の人にも施設開放事業も行う計画。TEL(0848)44―1613


田井商店がゆうパックでデベラ販売

鮮魚卸の(有)田井商店(尾道市東尾道7-42、資本金三百万円、田井誠一社長、TEL0848・46・3944)はこのほど、旬を迎えた尾道の名産「デベラ」(干したヒラメ)を郵便局のゆうパックを使って通信販売する事業を本格化させた。
デベラは一パック二十五〜三十尾のデベラを荒縄に通して販売。料金は消費税、郵送料込みで三千円。
向島などを含む尾道郵便局管内を中心に県東部の郵便局で振込取扱票が付いたカラー印刷の専用リーフレットを配布中。来年二月二十八日までの期限内に千パック以上の販売を目指すが、これまで順調に注文数を増やしている。
商品にはデベラが手のひらを広げたような形から「手平」、また「デメヒラメ」がなまって「デベラ」と呼ばれるようになったなど、デベラのいわれや調理方法を書き添えた解説文も同封されている。
また、同社は試験的に開設していたホームページで鮮魚のお歳暮商品の受注も初めて開始した。アドレスはhttp://www.c.do-up.com/~taiorosi/
商品はコチ、ハゲ、カキなどが入った四人前活魚鍋物セット五千円、剥き身の小フク(唐揚・鍋物用)四〜五人分五千円、シラサ海老四〜五人分五千円、タイ、ヒラメなどのお魚セット(内容は相談)五千〜一万円などのほか、カズノコやさよりみりん干し、サザエなどもある。料金は消費税込み、送料別途。
さらに十一月二十一日からは同社専用の商品ギフト券も発売、鮮魚セットが好みのタイミングで選べるカタログを付きの贈答用で、全国でも珍しい鮮魚購入ギフト券となる。販売は千円券のみ。当面は同社での電話応対によって販売する。
同社は昭和四十六年に創業。商圏は南北は因島から吉舎町、東西は福山市―本郷町が中心。小売店、スーパー、料理店に鮮魚、乾物を卸しており、年商は約六億円。
田井社長は会社組織としては二代目だが、鮮魚販売は祖母の代から継承しており、尾道の網元だった時代から数えると実に六代目という魚と縁の深い家系。新たに通販で瀬戸内海産の鮮魚ファン増加を狙う。



ナフコが本郷と世羅、新市に新店舗計画

九州を主地盤に中国、四国から関西へ店舗展開しているホームセンターナフコ((株)ナフコ=福岡県北九州市小倉北区鍛冶町1-2-16、資本金三億五百九十三万円、深町勝義社長)は、豊田郡本郷町と世羅郡世羅町、芦品郡新市町へ新店舗の開設計画を進めている。
ナフコが計画しているのは豊田郡本郷町下北方の国道二号線沿い北側で造成工事が進んでいる原市沖地区土地区画整理地内。イオングループのマックスバリュ西日本(株)(姫路市)が核店舗として出店、町内最大のショッピングセンターを開設する、この一画に出店するもので、衣料品店、百円ショップ、セルフガソリンスタンドなどが出店して来年八月オープンを予定している。
また、世羅郡世羅町に本郷町と同じマックスバリュを核店舗に開設している世羅ショッピングセンター隣接地に出店を計画しており、地元説明会や建設地の農地転用などの準備も進んでいる。
もう一店は、芦品郡新市町戸手の被服縫製会社ハチダイヤ(株)の工場とゴルフ練習場用地に進出するマックスバリュ西日本の店舗隣接地に出店する計画。
同社は、昭和四十五年設立で、ホームセンター「ナフコ」を展開している。九州が主地盤で、平成十四年七月現在で百五十四店舗、福岡県内に三十八店舗のほか、佐賀、大分、熊本、長崎、宮崎、鹿児島に多店化しており、本土側でも山口県内二十二店舗、広島県内十三店舗、県東部では竹原店、尾道店、松永店を開設している。島根、鳥取、岡山、四国では香川県にも進出、大阪、兵庫の関西圏にも九店舗を開設しており、年商千七百億円規模の大手。




こぼれ話  2002年12月1日号

林立する見えない看板は ユビキタス社会への道標

来年の春には尾道の観光エリアが「どこでも博物館」http://www.onomichi.ne.jp/~navi/になりそうだ。
携帯電話のインターネット機能を使って観光情報を引き出す単純な仕組みだが、観光現場に3ケタの小さな番号札を立てる点が普通の観光情報サイトとは決定的に違う。3ケタの番号を携帯電話から打ち込むことでその現場の情報が引き出せる。
考案した東北芸術工科大学の竹村真一教授によれば「現物・現場主義のシステム」だそうで、携帯電話とインターネットが生み出したふと出会った現物と、ぶらり立ち寄った現場でリアルタイムの情報をやり取りできるメリットは、これからグーテンベルグの印刷機の発明にも匹敵する変革をもたらすという。
場所についてはGPSとの連動も考えられるが、GPSの普及はまだ先。それより早い近未来、竹村教授の予想では番号札はバーコード付きに変わる。カメラ付き携帯電話を使ってバーコードを撮影し、関連した情報を引き出すという製品を来年にも商品化する動きがあるからだ。
インターネットと携帯電話。インターネット技術は来年夏ごろには一般固定電話にもつながる低料金のIP電話となって更なる普及が予想されている。その一方で携帯電話は身分証明書機能や決済機能を持ち合わせ、運転免許証や財布の代わりに持ち歩く時代が見えてきた。
社会を揺るがす一大インフラとしてインターネットが登場したときの夢はITバブルの崩壊によってペチャンコに潰れたように見えて、実は刀剣の鍛造のように鍛えられ、スピードを増し、正しく社会基盤に変革をもたらす武器に育ちつつある。利用者側も携帯電話はメール機能ばかりといった使い方から画像の交換など、情報を入手するツールとして生活文化になり始めている。
文化面では「どこでも博物館」で利用される番号札には、石工のまちの歴史も匂わせる石のふくろうが目印に使われる。世界中の多様な文化でふくろう(鳥)が空から情報をもたらす招福の象徴として利用されていることから選ばれたという。
日本初のシステムが尾道で動き始めようとしている背景に、日本で三十番目に創立された尾道商工会議所の歴史が物語る尾道の経済力がある。数字の上の経済力は日本で何番目と誇るわけにはいかないが、他都市に先駆けようという気概は脈々と受け継がれており、尾道ニュービジネス懇話会と広島経済同友会尾道支部が講演会講師として招いた竹村真一教授から飛び出した「どこでも博物館」の話に色めき立ち、強力に推進する力が働いた。結果、提案は創立百十周年記念事業の目玉に会議所が七百万円でシステムを買取り、寄贈を受けた尾道市が運営するという政経一体の形で取り込まれた。
竹村真一教授は著名な評論家竹村健一氏の子息。健一氏の奥さん、つまり真一氏のお母さんは尾道市向東町の出身。幼いころ、母に連れられて尾道水道を渡った思い出が「どこでも博物館」の発想につながったという。地縁、人脈を生かす術こそ経済力の真髄。見えない看板は見えない筋をしっかりと手繰り寄せるユビキタス社会の道標でもある。(J)

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