びんごトピックス  2003年6月10日号 
 
表紙写真


アンデックスのふとん乾燥車普及へ

国内トップの自動車塗装ブースメーカー、アンデックス(株)(尾道市東尾道15-29、資本金六千六百八十万円、田邊耕造社長、TEL0848・46・3711)の新事業「ふとん乾燥消毒車」製造が実績とともに順調に伸びている。去る五月二十六日に広島市内で行われた中国地域ニュービジネス協議会(松坂敬太郎会長)総会でも今年の中国地域ニュービジネス特別賞を受賞、これまでにない斬新な発想が評価された。
布団を乾燥させるサービスはこれまでもあったが、乾燥と消毒を組み合せ、その設備を車載設備として布団の持ち主である自宅前で乾燥サービスを実現できるようにした。これを受けて自治体や福祉協議会がふとん乾燥消毒車を導入、運用することで、寝たきりの要介護者など布団の乾燥と消毒を切に望んでいた人たちから感動される福祉サービスが可能になった。
ふとん乾燥消毒車は平成十三年五月に初号車を完成させ、尾道市に寄贈して社会福祉協議会が試験運用を開始。福祉サービスとしてフル活用されるほどの好評を得て増車、府中市や因島市、甲山町でも導入されるなど近隣から普及が始まり、アンデックスではこれまでに全国の自治体や主要福祉団体など三千カ所以上を全国行脚、これまでに長崎、群馬方面など二十四カ所で導入、五百件を上回る商談をつかんでいる。
ふとん乾燥消毒車はワンボックスカーとトラック、軽四輪の三タイプとそれぞれ4WD、2WDの駆動種別がある。軽四タイプで布団四枚を一度に処理。高温八十度、低温六十度の切り換え可能で、布団の乾燥消毒を一時間以内で行う。消毒は安全無害なヒノキチオールを使用、電源は発電機でも家庭用百ボルトでも使用できる。実用新案も登録済み。
福祉分野以外でもふとん乾燥消毒サービス車利用の商談が持ち込まれており、普及による新たな需要創造効果も生まれている。
同社の田邊社長はニュービジネス特別賞受賞について「自社の塗装乾燥技術を一〇〇%使用、ITなど新しい技術は特にない。しかしながら布団乾燥サービスの出前を可能にし、自治体などへ販路を求めたビジネススタイルを評価していただき、光栄に思います」と喜ぶ。
同社はこの三月にはやまぎん地域企業助成基金の対象に選ばれているほか、地元金融機関の出資を受けるなど経営の透明性が高く評価されている。
また、同社は五月二十六日に自動車塗装設備関連では国内初のISO9001(2000年)認証も取得した。審査機関は日本海事協会。適用範囲は塗装ブース、排気装置、布団マットレス等殺菌乾燥装置の設計・開発・製造及び付帯サービス。同社本社のほか東京、名古屋、大阪、福岡の営業所も含む。生産品質の向上でトップシェアのさらなる拡大を目指している。


ビュウホテルセイザンがタイ料理店

尾道千光寺近くで観光ホテル「ビュウホテルセイザン」経営の(有)尾道ビュウホテル(尾道市西土堂町16-21、資本金三百六十万円、花本聖士社長)はこのほど、同ホテル四階のレストランを「お山の食堂・タンタワン」としてリニューアルオープンした。
観光客に加え、地元客にも低価格で本格的なタイ料理を楽しんでもらえるようリニューアルしたもの。花本聖士社長は、タイ式のキックボクシング、ムエタイ選手としてタイで活躍していた経歴があり、現在もその道の道場との交流を持ち活動中。選手時代に遠征試合先の現地でふるまわれた、辛さを効かせた独特な香辛料が特徴のタイ料理の虜になり、「尾道でも再現を」と味の記憶をたよりに研究を重ねてきた。
タイ人の奥さん、クワンジラさんの実家がタイで食堂を経営していることから、本場手作りのカレーペースト、ハーブ、香草、唐辛子のほか必要な食材や調味料は、タイの儀父母の食堂からの「産地直送」。海外輸出用の従来のペーストなどとは違った本場の香辛料の辛さや酸味を活かしながら、日本人の好みに合うようにアレンジしているが、現地でタイ料理を食べたことのある人に物足りないと感じられないように、要望に応じて辛さを現地並みに調整した料理も提供する。
メニューは日替わりで、魚貝カレー「ゲーンペップラー」やトリ肉のグリーンカレー「ゲーンキョワーンガイ」、豚肉のイエローカレーなどいずれも八百〜九百円。また定番のトムヤムクン、春雨と和えたヤムサラダ、季節によってはトリ肉や魚のバナナの葉の包み焼きなど。くり抜いたパイナップルを器にしたパイナップルカレーは女性客に人気。充実のコース料理は事前の予約で千八百〜三千円。アルコールは生ビールなどのほかに近くタイビールも置く予定。営業時間は午後六時〜同九時三十分、ラストオーダーは九時、四人がけテーブル八セットで計三十二席。問い合わせはTEL0848・23・3313まで。
同ホテルは海抜約百五十mで、四国を背景に浄土寺山から尾道大橋、向島まで尾道水道の全景が楽しめるホテル。これまで四階レストランでは主に旅行客を対象に瀬戸内の海産物を使った懐石料理などを提供してきた。情報発信も、これまで県外に向けられたものが多かったが、今後は地元密着のレストランとして、市内の飲食店などとこまめに連携しながら集客を図る。
南向きで太陽光を存分に取り入れられるレストランの造りにちなんで付けた店名「タンタワン」はタイ語でひまわりの意味。ホテル経営者であると同時に料理長としても腕を振るう花本聖士社長は「メニューはまだ少ないが、こだわり、丁寧に作り上げるタイ料理を提供したい。今の季節なら午後六時くらいから、灯りがともり始めてからが絶景。地元のお客さんに楽しんでいただきたい」と話している。



パワフルが中古部品を仮抑えのサイト

新品・中古のタイヤホイール・自動車部品など販売のタイヤショップパワフル(福山市曙町6-12-6、新貝浩店長、TEL084・963・3456)がこのほど開設した直販サイト「福山セコ/パワフルWebsite」(アドレス=http://www.powerful-net.com/)に、希望商品を三十分間仮押さえし、商談まで少し時間かけて検討できる「キープボックス」を採用した。
中古車部品、なかでも高額の商品は希少性が高く、売れてしまったら替わりはない。購入希望者は短い時間で結論を出さなければならないことから、その時間を少しでもとってもらおうと「キープボックス」を採用した。同サイトで会員登録し、パスワードを得てログインすれば、カテゴリ分けされた商品の一覧を見ることができる。仮押さえできる時間は三十分で、スタートすると秒単位でカウントダウンが始まると同時に、他の閲覧者にはその商品が見えなくなり、購入希望者は時間をかけ下調べや商談を進めることができる仕組み。一度に登録できるのは十商品まで。会員登録は無料。
同店が加盟する、中古車部品供給ネットワーク「NGPグループ」の本部が採用している同様のシステムを参考に、岡山のシステム開発業者D―VEI(倉敷市)に依頼した。
このシステムを採用して以降、商談の中商品に顧客のかぶりがなくなったという。現在ネットでの売り上げは月百万円で、目標は年間二〜三千万円。掲載商品数は常時二百点前後で、将来的には四百点まで増やす。今後は部品買取りを強化し、中二階の増築など売場面積の拡大も検討する。定休日は水曜日。
同店は自動車解体、製鋼原料加工などの(株)福山セコ(福山市曙町6-7、資本金一千万円、藤原廣治社長)の自動車リサイクルパーツ、タイヤ販売店。福山セコは昨年ISO14001認証を取得している。


前田教授らが世界初のロボットハンド

広島県立保健福祉大学(三原市学園町1-1)の前田祐司教授を中心としたグループが、上肢障害者の生活支援を目的に研究開発を進めていた福祉用人間型ロボットハンドシステムの開発に成功した。人間の手に似せ可動部が二十七箇所ある点で世界初というロボットハンドとして注目を集めそうだ。
開発したロボットハンドシステムは、ロボットハンド部と操作用のコンピューター、制御装置で構成。ロボットハンドは人間の肩、肘、手の二十七可動部を再現した右上肢で、ほぼ大人の上肢と同じサイズ。二十七可動部の内訳は、肩が前後、上下、回転の三可動部、肘の上下で一可動部、前腕の内外の回転で一可動部、手首が上下と左右の二可動部、さらに手の部分は五本の指それぞれが四可動部あることから二十可動部。肩から肘までの駆動はウォーム歯車と傘歯車、その他はハーモニック歯車とケーブルで駆動する。
操作は、パソコンの画面で、各可動部の駆動速度と座標上の位置を指定したものを段階付けしながらプログラムする。既に行った学会発表では、腕を水平に伸ばしたスタート位置から左前方に下げて指差し確認をした後、じゃんけんのグー、チョキ、パーを披露、さらに近くのコップを掴んで持ち上げ、同じ場所に置く一連の動作をデモンストレーションした。
「人間に類似した外観や機能性を持たせ、人間と共存する環境で違和感なく使用することができる」ロボットハンドというコンセプトに沿うため装飾性も工夫。ロボットハンドを覆う素材は、軽さと薄さ加工に耐える素材としてシリコンラバーを採用。しわや指紋もリアルに再現し、メカニカルな外見からくる違和感を取り除いた。また課題だった重量も、構成部品にデルリンと呼ばれる自己潤滑性の高い高分子材料を使用することでベアリングが不必要となり解決。体重70kgの人の腕と手の重量約は約4.2kgで、ロボットハンドも腕と手を合わせ約5kgと軽量化につながった。研究開発費用は約二千万円。
今後の課題は最少必要可動部数への絞り込みなどによるコストダウンとさらなるコンパクト化。それを実現できれば、ロボットハンド自体がポールに沿って上下にスライドできるよう改良して、車椅子や電動介護ベッドに装着する補助具としての需要が見込まれるという。
前田祐司教授は「寝たきりの人や、労働災害、自動車事故で腕を失った人が、ロボットハンドの補助を受けながら近くのものを取ったり歯磨きができるようになる。実用化への期待は大きい」と話している。開発チームは同教授、甲田寿男(経済産業省産業技術総合研究所機械技術研究所首席研究官)、金子真(広島大学大学院工学研究科教授)、小山順二(精密減速器メーカーの(株)ハーモニックドライブシステムズ、東京都)各氏で構成。来年には海外で開催される学会でも成果を発表する。



こぼれ話  2003年6月10日号

理屈は通るが不満は噴出 高須小問題を語った会場

尾道の教育を語る市民連絡会の主催で「『高須小問題』の真相を語る市民の集い―高須小で何が起こったのか探って見ませんか!―」と銘打った会合が六月三日午後六時三十分から市公会堂別館で開かれた。
主催する連絡会の呼び掛け人は教員や革新系元市議など十四人。どちらかと言えば労働者の権利を守る立場で活動している人たち。元高須小の教諭三人もパネリストとして参加、沈黙を破って心境を語った。
報道陣も詰め掛けた会場は約二百人の聴衆。パネリストの発言や拍手の様子から、教員の人が相当数を占めていたようだった。しかし最後の質問者への賛意を表す声などから高須小問題に関心を寄せる保護者も多数いたことが分かった。
そんな会場だった。約二時間の内容はこれまたどちらかと言えば労働者の権利を守る立場のパネリスト七人がマイクを回す形で思いを語るものだった。憲法を研究しているという大学教員、オンブズマン活動をしている人、幼児の障害者教育に携わる人、主婦など。社会で立派な役割りを担っている人たちだが、発言内容は配布された資料に沿う、市教委と県教委の出した報告書などの問題点を指摘するものだった。
指摘は概ね次のような内容だった。第三者を入れず内部の人間だけで構成された調査委員会の報告書は自分たちの責任をぼかし偏った報告内容ではないか、なぜ、自殺前に元校長が申し出た医師の診断書に基づく休職願いは反古にされたのか、なぜ、自殺前に教頭が病休したときすぐに別の教頭を赴任させなかったのか、自殺した元校長や病気となった教頭の勤務実態は苛酷ではなかったのかといった点だった。
それぞれの指摘は鋭く、同じ疑問を持つ。市教委がまとめた報告書は迫力に欠け、歯切れが悪い。市教委の落ち度ももっと明らかにされるべきだった。
しかしパネラーの発言後、コーディネーターがまとめに入ると「わしは帰る。自分たちの言いたいことばかり」と退場した人の意見をきっかけに、不満をぶつける感情的な意見が噴出した。「揚げ足を取る意見ばかり」「あなた方に反省する気持ちはないのか」「元高須小の先生がせっかくおられるのだからもっと教えて欲しい」など。
パネラーの意見に、なぜ会場の普通の人(会社経営と自称)は不満を感じたのか。理屈は通っていても考え方が一方通行で、違う考え方を取り入れるゆとりを感じなかったからではないか。
パネラーとして参加した元高須小教諭の一人は「分からないことはきちんと知りたい。それは子どもたちにとってまじめな気持ち」と校長への質問攻めがあったと読める報告書の見方に反論した。それを受けたコーディネーターが「分からないことは質問しなさいと教え、大人になったらそれがいけないんでしょうか」と教諭に同情を寄せた。
理屈に誤りはない。しかし国旗・国歌問題に触れた瞬間はかなりの固さを感じた。会場で噴出した不満はその固さに大きな壁を感じているからに違いない。(J)


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