びんごトピックス  2003年10月10日号 

 表紙写真    


キングパーツが新アルミ鋳造工場

精密鋳造部品等製造のキングパーツ(株)(福山市御幸町下岩成879-1、資本金一億四千万円、高橋孝一社長)は、本社工場内に建設したアルミニウム鋳造工場の増築工事を完成し、生産能力を大幅に増強した。
本格稼働を始めたアルミ新鋳造工場は鉄骨造り平屋建て約六百五十平方m、総事業費は約二億円。
新鋳造工場の増築により、防衛庁向け関連製品製造に必要なMILスペックの生産体制も充実し、着実に関連製品の受注も増加している。全国的にもアルミ合金の精密部品鋳造品の製造工場は少なく、新工場の稼働でこの部門を新しい収益の柱として育て上げる方針。
このほどまとめた平成十五年五月期決算では、売上高三十二億五千八百四十五万九千円、税込利益六千五百八十一万九千円で、前期比増収増益を計上している。
同社は、蝋(ろう)で部品の型を作るロストワックス製法といわれる精密鋳造技術で、さまざまな分野の精密機器部品を製造し、社内に金型工場・鋳造工場、機械加工工場を持つ一貫生産システムを構築しており、多品種小ロット生産にも対応できる。昭和三十九年十月、東大阪市で会社を設立、ロストワックス精密鋳造の研究を始めた。その後、現在地に本社を移し、福山工場、岩成工場を相次いで建設して現在の体制となった。
現況は、本社・鋳造工場、市内加茂町下加茂に技術センターと開発センターを開設、さいたま市に北関東営業所、東京都八王子市に東京営業所、名古屋市に名古屋営業所、東大阪市に大阪支店、福岡市に九州営業所、福山市に広島営業所を設置して、セールスエンジニアが全国で営業活動やサービス体制を確立している。
取引先は松下電器産業、東芝、日立製作所、三菱電機、住友重機械工業などを主に九百五十社。


三原テレビ放送が地元資本の新体制で拡大戦略

三原テレビ放送(株)(三原市東町3丁目14-1、勝村篤博社長)は、第三セクター化による経営の健全化とエリア拡大などを進めるため、市内財界からの出資を募集している。今回一般からの出資を受けるのは、同社の全株式を所有していた(株)増岡組(呉市)から一億円で同社を企業買収して、地元資本による経営に転換し、エリア拡大や加入者の増加を図り、地元メディアとして発展させる計画。
増岡組から九月十八日付けで三億八千九百万円を増資して新資本金を四億三千五百万円とした。この増資金により累積欠損や借入金を一掃した後、減資して債務をゼロにして企業買収する。
なお、地元財界からは二億二千万円の出資を募る計画で、この手取り資金の使途は、買収に一億円、残る一億二千万円は事務所の移転費と江南地区へのエリア拡大のためのケーブル延伸などの投資金に充てる。
すでに市内の大手事業所などから増資引き受けの申し入れもあり、十月一杯を目途に増資を終える計画。
増資計画書では、一社当たり一株五万円で十株五十万円以上で依頼している。増資が実現すると名実ともに地元企業として認知され、加入者増の営業にも弾みが付くものと期待している。
設備の現況は、糸崎、寿、広友、古城通、東、旭、古浜、中之、港、城、駒ケ原、本、西、西宮、西野、宮浦、皆実、円一、頼兼、大畑各町の全域または一部一万六千五百世帯が許可エリアで、ケーブル敷設地域は一万二千世帯、設置澄みの引き込み端子数七千五百世帯、加入者総数は三千八百世帯、うちビル対策世帯百件を含んでいる。
最近は七人のスタッフで、年間売上高は四億円規模、三年前からは単年度の黒字を計上している。企業買収後の第一期エリア拡大計画では、貝野、和田、田野浦、明神、宗郷など沼田川の江南地区を対象に、光ケーブル・同軸ハイブリッド七百七十MHZを約四千世帯へ拡張するもので、市内宮沖町の沼田大橋北詰めにある三原国際外語学院内に本社、スタジオなど局舎を全面移転することで総事業費二億四千万円を見込んでいる。
エリア拡大実施後の許可エリアは二万五百世帯で市内全世帯の約六二%をカバーできる。新たにインターネット接続サービスやIP電話などの通信事業へも参入する。
新しい体制による経営陣は、勝村善博社長、役員に伊達和仁、後藤和之、小野恵各氏の新任、竹則辰秋氏の留任、監査役に大藤直也氏の就任などが予定されている。
三原テレビ放送は、昭和五十八年十一月二十六日、県東部初のケーブルテレビ会社として設立され、六十年四月、県内のトップを切って放送を開始した。六十一年十二月、加入者数の伸び悩みから早くも約三億円の累積赤字を抱え、役員が総退陣し、増岡組が全株式を取得して再建に乗り出した。設立二十周年を迎えた今年、新体制による経営陣で発展に向けて確かな一歩を踏み出すことになった。料で配布する。問い合わせは同社まで。


ワールドルームブリスが短工期レンガ調アプローチ施工

斬新なデザインの個性的な住宅建築を手掛ける(株)ワールドルームブリス(福山市瀬戸町山北491、資本金一千万円、井上敬治社長、TEL084・951・4880)は、駐車場やアプローチなどを、ステンシルの技術を応用してレンガ調などに演出できる、低価格、短工期のグランドコンクリート施工を提案している。
グランドコンクリート施工とは、本物の敷きレンガ同様の仕上がりが可能なコンクリート化粧材を使った施工技術。型抜きで様々な模様を作り出すステンシルの技術を応用するもので、レンガ調だけでなくテラコッタ調やランダムなタイル調など自由にデザインできるのが特徴。住宅やアパートの駐車場、アプローチ、エントランス、ポーチなど幅広く施工できる。床面などにグランドコンクリートを打設した上に、希望のデザインに合わせた網目柄のステンシルを置き、さらにその上からカラー粉を散布。コテで押さえ硬化、乾燥した後にステンシルをめくりとると、ステンシルにのっていたカラー粉が除去され、目地の部分を作る。十二種類から選べるカラー粉の調整や、十八種類のステンシルの柄を組み合わせて自由なデザインが可能。
仕上げは、コテの力加減で恣意的に微妙なムラを作り出すノーマル仕上げ、本物の岩の表面をたかどったマットで押さえて表面に凹凸をつけるマット仕上げなどを用意している。耐久性も高く、クレームもないという。
気候や天候などにもよるが、ほぼ一日で工事が済むことから、一平方mあたり八千円と低価格。普通のコンクリのみ打設の同五千円程度、本物のレンガを使った場合の同二万円程度と比べても低コスト。新築にもリフォームにも対応する。同社の井上敬治社長は「駐車場などのコンクリート打設のリフォームをお考えなら、一平方mあたり三千円アップで高デザインに仕上がります」と話している。オーストラリアで生まれた工法で、(株)神戸ガーデンハウス(神戸市)が開発した。
同社はグランドコンクリート施工にガーデンやエクステリアとのトータルコーディネートを提案。備後でもガーデニングブームを背景に庭を使ったティーパーティーが生活の一部となってきており、福山、尾道などの住宅団地で同社が施工した庭が注目を集めている。


山口恃至さんが神原病院へ歌集の感謝状

九月七日に亡くなった妻・満子さんへの思いをしたためた短歌と最期を看取った病院スタッフへの感謝状が神原病院(福山市赤坂町)の神原武志理事長の元に届けられた。
感謝状の送り主は尾道市美ノ郷町の山口恃至さん(76)。神原理事長ほかスタッフは短歌が添えられた感謝状は珍しく、深い感銘の輪が広がっている。話は入院患者を見舞いに来た人にも伝わり、ぜひ、同じ気持ちで看護を続ける人にも伝えてあげて欲しいと取材依頼が舞い込んだ。
七十七歳で亡くなった山口満子さんは今年二月に尾道総合病院へ入院、最善の治療の甲斐もなく植物人間に近い状況となり、長期療養型入院に対応する病院への転院を勧められた。三月から神原病院で闘病生活に入ったが、半年近い静かな闘病生活の後、不帰の人となった。
妻と会話もできない状況の中、ひたすら看病を続けた山口恃至さんはその心境を歌に詠み続け、「妻との闘病生活」と題して百十遍の歌にまとめた。感謝状のなかで山口さんは「心暖まる励ましを頂きながら、七カ月間、後顧することもなく、私にできるだけの看護をしてやることができました。あるときは笑い、或るときは涙しながら、植物化した無表情の妻に話しかけ、あっという間の七カ月間でございました」と振り返って感謝を伝えている。
山口さんは六十歳ごろから短歌を始め、日本最大規模の歌人親睦団体日本歌人クラブに所属、現代万葉集にも歌が収録されている。「妻との闘病生活」は入院後からの微妙な心境の変化が表され、赤裸々な看護者の心境を窺い知ることができる。
神原病院は施設を国に寄付し運営のみを行う特定医療法人。患者との交流を重視して夏にはスタッフ手づくりの素麺流しを行うなど交流イベントに注力。世界をリードするドイツ・ハノーファー医科大学から麻酔学の権威、B.パニング教授を招いた講習会を若手医師らが主体的に開くなど研鑚にも努めている。

「妻との闘病生活」より抜粋


生きるとは 如何なることか 枕辺に 植物化したる 妻は答えず

回復に 望み無き妻に 転医をと 声を潜めし 医師の唇

介護する この手に言葉 添えながら 苦悩の皺を そっと撫でやる

失語した 妻に向いて 四ケ月 独語は慣れて 顔色読みぬ

五十五年 連れ添い来る この妻の 憂い読めぬ ことの悲しさ

回復の 奇跡起これと 祈る日々 夢を夢見て 暮れる真夏日

この身には 及ばぬ看護に 明け暮れる 感謝は涙で 頬を濡らしぬ



こぼれ話  2003年10月10日号

行きたい、行きたい が、分からない大人

何気ない民家に足を踏み入れ、はまってしまった人が多い。尾道市の千光寺山南斜面にこつ然と誕生した「アトリエ ドラゴン」(26ページ参照)は不気味な魅力で若い女性のハートを鷲づかみにしている。
若いといっても子ども連れのヤングママもいる。イベントスペースといっても畳の居間だが、目の前で百円玉を大きなコインに、そして最後はCDに変えてしまうマジシャンに子どもたちも大はしゃぎ。子どもから大人まで「また行きたい」とすっかりはまってしまうようだ。
事前に届いた案内状は極めて怪しかった。テーマは「イーヨーサンの世界」。解説は「昨今のニュースは痛ましく悲惨な事件が多い。その中には少年の犯行であることも少なくない。犯行の動機は漠然とし、大人たちには分からず、安易な精神の闇という言葉でかたづけてしまうことが多い」と重い文面で始まる。
イーヨーサンは十三歳の架空の少年。集まったアーティストがそれぞれ、自分が十三歳だったころを回顧したり、現在十三歳の少年が生まれた年に自分は何をしていたか、といった思考で少年を表現する。
見事な琴の演奏もあった。一九八五年生まれの森川浩恵さんは東京から駆けつけた。プロフィールもユニーク。「鉄格子の病院と山手線五周の生活を経て、現在新宿の高校に通う、花をも恥らう乙女。将来の夢は宇宙単位の詐欺師。…」。
革命発明家きさききみたかさんのプロフィールも不可解。「映像によるインスタレーションを中心に、短編映画、CM、ドキュメンタリーと幅広く映像を作る傍ら、コテカルプロジェクトを一人で立ち上げ、パプアニューギニアの山間部族(ラニ族、ダニ族など)が付けているペニスケース(コテカ)をモチーフとした電子楽器『コテカルミン』を製作している」とある。眉をひそめながら読むしかない。
こうした不可解な前振りを頭に入れつつも、恐いものみたさに負けてしまう人間の愚かさ。おっかなびっくりで民家の玄関を入ると意外なことに「こんにちは」と透明感のある明るい挨拶に出会う。このギャップには感心してしまう。
民家は古く、二階への階段は狭くて急勾配。その踏み板と踏み板の間は絵画の展示スペース。尾道帆布展をプロデュースする新里かおりさんの作品も展示されている。
仕掛け人は民家の借主、村上博郁さん(29)と姫路市の友人、松本健司さん(27)。二人とも尾道と古い民家の並ぶ斜面にはまった。村上さんは松永の出身だがドイツ、ブラジルの生活を経験、昨年五月から尾道を定住の場所とした。最初は映画づくりを考えたというから今後も何をやってくれるか楽しみだ。
民家は床が抜けそうだったことから二人で梁を補強する作業から始めたという。「場があれば若者は集まる。尾道と聞くと、みんな行きたい、行きたいだった」というから場づくりがさらなる尾道パワーアップの課題。ただ、トイレの改修は自分たちでは難しいとのこと。尾道の大人たちには分からず、安易に片付づけていることがありそうだ。(J)

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