広島県立尾道商業高等学校(尾道市古浜、小村雅彦校長)は十二月十九、二十日の二日間、尾道市土堂二丁目の商店街空き店舗を使って模擬店舗を開店させ、海産物や野菜を販売、合わせて予約を受けた商品を千光寺山南斜面エリアには無料で配達するという試みも行った。
店名は「デリバリィ浜っ古」。教員の指導で同校三年生約百人が実際の運営を担当した。商品は田井商店の協力で準備した正月用の海産物や尾道特産のデベラ、また生徒が手づくりしたしめ縄や世羅高校生徒が育てた野菜など。
店舗のほかにもリヤカーに商品を積んで商店街を売り歩いたり、天秤棒に商品を入れて山手エリアを売り歩いた。また事前にPRする宣伝隊を歩かせたり、需要の聞き込みを行ったりと会社組織の役割り分担で事業に当たった。
県東部では初の救命救急センターを備え、高度医療の充実を図るため建設工事を急いでいた福山市民病院(福山市蔵王町5-23-1、浮田實院長)の新館が完成し、十二月二十三日、三好章市長、県東部の医師会関係者ら約六十人が出席して完成式典が開かれた。式典の後、一般市民に病院内の公開が行われ、医師や看護師の説明を聞きながら各階の施設や医療機器を見学した。
完成した新館は、鉄筋鉄骨コンクリート造り地下一階、地上六階建て延べ床面積一万二千九百九十一平方m。
地下一階は放射線治療室で最新の放射線治療装置を新設し、がん治療を行う。一部に厨房、機械室なども設けている。一階は救急外来、循環器・心臓血管外科診察室、生理検査室、MRI(磁気共鳴断層装置)一台を増設し二台で診断を行う。二階にICU・CCU・HCU、血管撮影室(二室)の二十四床を設け、血管撮影装置二台を増設し、現在の一台と合わせ三台の運用体制とした。県東部初の熱傷患者用ベッドもある。三階は循環器科・心臓血管外科の病室で五十床。四階は内科・小児科・産婦人科・未熟児室の病室三十二床。五階は内科の病室で四十六床。六階は内科と感染症病室で四十床を設備している。
ベッド数は合計百九十二床、うち救命救急センタ―二十四床と感染症病床六床。
特別室は、バス・トイレ・洗面台・応接セット・クローゼット・チェスト・収納棚・冷蔵庫・テレビ・机・椅子・電話・インターネットが完備され、室料は一日一万五百円。個室は、トイレ・洗面台・収納棚・リクライニングチェア・冷蔵庫・テレビ・電話・インターネットがあり一日室料四千二百円。
今回の新館建設の目的の一つに個室不足の解消があり、個室は重症個室、有料個室合わせて百三十四室(新館・本館)となる。新館の完成で今後、本館の改修を始め、災害時に急増する患者の受け入れ体制の整備や自家発電設備を拡充する。本館一階に外来診察室を増室し、コンピュータによるオーダリングシステム導入等による待ち時間の短縮を図る。本館七階に個室十床の緩和ケア病床を新設し、終末期医療の充実も図る。人間ドック十室も全て個室に整備する。病床は感染症六床、一般病床三百九十二床合わせて三百九十八床となる。医師と看護師も大幅に増員され、医師八十人、看護師二百九十五人体制となる予定。
救命救急センターは、新館の一・二階に設置し、心筋梗塞、脳卒中、多発外傷患者や重篤な救急患者を二十四時間体制で受け入れ、常に救急専任医師及び兼務医師を配置して対応する。また、ヘリポートの設備も検討している。平成十七年四月には本館の改修も完了し、地域の中核病院として全面運用が始まる。総事業費は約百三十億円。
なお、救命救急センターの開設に向けて、すぐ近くの山陽自動車道福山東インター料金所と、市民病院に直結する約二十mの進入路の工事に着工しており、三月には完成する。
昨年九月設立の労働者派遣業などの(有)シジアス(福山市引野町1-17-1、資本金三百万円、田辺敏幸社長、TEL084・940・5245)はこのほど、深安郡神辺町川南に管理事務所を開設した。
同管理事務所は、神辺町内にある電子機器製造業者の工場へ出向している従業員の管理育成を強化するために開設したもの。通常見られるように、常駐管理者を現場に出向させて監督、指導に当たらせる場合、朝礼、終礼の声かけなど形式的な管理に陥りやすく、実質的な指導が必ずしもできていないことが多いという。そこで同社は管理事務所開設で出向先との距離をより縮め、工場内外から出向先、従業員両者の満足度を高める提案型管理を実践する。「育成」をテーマとしている同社が目指す、管理、指導もできる出向従業員の育成を軸に、作業効率化やスキルアップに応じた給与体系の見直し検討、従業員のモチベーションアップ対策などにきめこまかく対応できる環境を整えたとしている。
また同時に出向従業員のために、出向先工場近隣に駐車場約五十台分を確保。出向先と従業員の負担をできるだけ減らし、双方の満足度を高めることを狙いとしたもの。同社の田辺敏幸社長は「本当の戦力として働いてもらいたいから、取引先に必要と思えばそのためだけに事務所も出す。当たり前のことかも知れませんが、そういう姿勢の徹底が自然と差別化につながるはず」と話している。同社は本社のほか、神奈川県にも営業所を開設、初年度三億円の売り上げを見込んでいる。
ホテル経営や広島市内で複合商業施設などを手がけるディベロッパー、(株)エム・シー(広島市中区富士見町8-22、山本功社長)関連会社の(有)エム・シー福山(福山市東桜町1-14、同社長、TEL084・973・0103)はJR福山駅近くの元福山ビブレビル(同所)の複合商業施設へのリニューアルを進めている。
地階から五階まで飲食や物販などのテナント募集と開店準備を進めると同時に、六階には近隣で最大規模となる約五十のブースを設けた「SOHO福山倶楽部」を開設、常時内見会を行うなど利用者を募集している。
■「SOHO福山倶楽部」 低価格のレンタルオフィス
四年前、マイカルの不採算店見直しで閉店した複合商業ビル「福山ビブレ」。地下一階、地上七階建て、述べ床面積二千五百平方mの同ビルを購入したエム・シー福山が複合商業ビル「エム・シー福山ビル」としてリニューアル。その六階にSOHO向けの低価格レンタルオフィス「SOHO福山倶楽部」を開設した。
同フロアーには、入室者の営業案内などを置くラックを設けたロビーを抜けたところにある入り口左側に受付を設置。月曜日〜金曜日の午前九時〜午後六時まで打ち合わせ室などの施設予約管理、入室者宛て郵便物仕分けやファックス受信などの業務を行う。レンタルオフィスは、約六・六平方mのAタイプが月額利用料三万円で四十室、約十三・二平方mのBタイプが同五万円で十室の計五十室。保証金は利用料の一カ月分。両タイプとも机、椅子、内線電話を完備している。利用者は個別のカギで各事務所を管理する。
入室者は、プリペード式でカラーコピー機、ファックス(送信専用)が利用できる。また光ファイバーを利用したブロードバンドでIネット環境も快適。Iネット利用は初期費用一万円、設備使用料月額二千円が別途料金となる。ほかに同フロアーには、午前九時〜午後六時まで利用できる応接室(二室)、飲料自動販売機やテレビなどもある二十四時間利用可能な打ち合わせコーナーもある。
既にAタイプ二室をセットで借り受けた事業者を含め五事業者が入室して営業中で、一月中にもさらに一業者が入室する予定。入室者は福山、尾道を中心に活動する税理士、中小企業診断士、携帯電話関連商品販売業者、システム開発業者など。エムシー・福山では今年度中に三十〜四十室が埋まると見ている。入室者同士の情報交換やニュービジネスの展開も期待でき、同社は「将来的にはSOHO倶楽部の管理も、入室者に行ってもらえるように成長させていきたい」と話している。
また同フロアーでは会議室もレンタル中。八十二・五平方m二十六席と二十席の二タイプをそれぞれ一時間千五百円で貸し出す。パーテーションを撤去すれば百六十五平方mの広い会議室となる。利用時間は午前九時〜午後十時まで、一時間程度なら延長も相談できる。問い合わせは同社または松尾地所(株)(TEL084・932・1755)まで。
■飲食など複合商業フロアも 4月から順次オープン
同社はこれまで、広島のアルパークやパセーラなど都市部の複合商業施設の飲食スペースや商業フロアなどの企画を手がけてきた実績を持つ。
「エム・シー福山ビル」一階には、物販や飲食のテナント入店の交渉が進んでいるが、既に一足先に光サイフォンでコーヒー好きに知られるオープンカフェ「ララ」が営業を開始している。ほかにも飲食、物販などの入店を予定。また地階は飲食のほかにカラオケやクラブなど、若者も楽しめるテナント構成となる。
二階には、エム・シー福山が独自で演出を手がける飲食スペース「食通 地蔵横丁」が四月一日にもオープンする予定。テーマは「昭和三十年代」。入り口に設置する「お地蔵さん」を中心に、バラック風の店舗などで懐かしい風景を再現。内外装に使用する木材や、装飾備品のポンプも当時のものを使うなど凝った演出が目を引く施設となる。またラーメンやお好み焼き、洋食など幅広く十店程度を募集するテナントとは別に、二階中央部にはほったて小屋をイメージした厨房を中心とした屋台を設置、イメージを活かすテナント入店希望者と交渉中。四月一日には数店舗が同時オープンする見通しで、営業と同時進行で他テナントの入店交渉を進める計画。
三,四階は貸事務所、五階はブティック、七階はエステ業者と交渉を進めている。
また同ビル南側では同社が低価格ホテル「ハイパーホテル123福山」を経営している。同社の山本功一営業課長は「観光開発が課題の福山を駅前から盛り上げる施設の一つとなれるよう全力で取り組む」と話している。
新年、明けましておめでとうございます。
さて、今年はやっとのこと景気がよくなりそうだ。しかし日本の景気がよくなっても自社に及ばない企業も地方には多く、二極分化がますます顕著になる年ともなりそうだ。
当社が毎年行っている購読者アンケートの結果では、「景気はよくなる」が一九%と昨年のゼロから一気に急上昇した。景気を左右する企業マインドが急上昇したのだから「よくなる」とみていいだろう。
しかしその反面、当新年号に各界からご寄稿いただいた新年の挨拶からはまだまだ厳しい実状も伝わってくる。特に地元密着型の中小企業を束ねる代表の挨拶からは景気の上向きが、現場で実感されない絵空事に過ぎないことが分かる。それでも全国チェーン店の進出に慄き、従来手法の延命策ばかり考えてきた数年前までと違い、手探りながら、かなり明確な勝つ方法を探し当てたのではなかろうか。
福山商店街振興連合会の高田理事長は挨拶の中で「お年寄りに優しい街、子どもが安心して暮らせる街」を目指すと宣言している。高度成長期には消費者として後回しになりがちだった世代を商売のメーンに据えるという。何気ない言葉だが、背景に確固たる信念のような力強さを感じる。これまで政治でもてはやされてきた「お年よりや子ども」へ商売人がきっちりと着目したことは、何か実需をつかむ妙案、新手法を見つけたのではなかろうか。タウンモビリティ実験などで、ボランティア意識の強い優良な消費者がけっこう集まることが実証されたり、働く世代が郊外型店舗へ走る中、孫のために買い物をする高齢者の増加なども認識されはじめた。アートショップふくふくの運営から得られたノウハウの集積も著しい。中心市街地への住宅回帰も始まっており、そうした実態に呼応した商店街の将来像がおぼろげながら見えてきたようだ。
もう一つは連携。産学官の連携も声があがって久しい。しかし福祉機器をはじめ、これまでより一歩も二歩も踏み込んだ具体的な製品開発が注目されている。備後地域では県東部工業技術センター、福山大学といった知の集積機関をこれまで一部の企業しか利用してこなかったが、ここにきてかなり一般化、保有特許の活用にも乗り出した。
各会議所会頭挨拶から読み取れる共通点は内需の喚起策。地域ブランドの育成、地場産業の観光化など地元に対する自信に立脚した具体策が目立つ。各企業の代表者も景気に振り回されず、自社の技術や個性に磨きをかける方針のようで、これまで以上の積極性が感じられる。ただ世界に目を向ければ、石井表記の石井社長が評するように、誰にも予想がつかない混迷の年に違いない。
各界からのご挨拶を現状報告と捉えて当地域を眺めれば、今年こそ、内需主導の景気回復元年との期待が高まる。申(さる)年の「申」は稲妻をかたどる象形文字で、まっすぐに伸びるという意味。動物の猿は古代エジプトでは太陽の従者で、知恵の神。蓄積した知的財産が利益を伸ばす年だと願いたい。(J)