上下水道、空調工事などの山陽工業(株)(尾道市高須町904、資本金八千八百万円、高橋宏明社長)は取得したISO9001の認証登録証が一月六日、本社に届いた。
認証は2000年版で昨年十二月八日付の登録。平成十四年十二月にキックオフ。本社工事部、長者原工場(市内)が対象範囲で、給排水衛生、冷暖房空調並びに消防、上下水道等の設備工事、工場建設配管等の加工が対象業務。審査機関はペリージョンソン・レジストラー。
同社は造船配管工事、上下水道工事のほか、建築業界で工場やビルディングの大規模空調・給排水工事などを担当、空調では独自開発したフューチャー工法、ポンプユニット工法を全国展開している。
最近ではフューチャー工法で液晶生産を拡大しているシャープ亀山工場、中部国際空港、シンボルタワー高松の空調配管工事を手掛け、東京の丸の内で建設中の駅前再開発ではB工区、C工区の空調機械室向けにポンプユニットを納入している。
ポンプユニットは同社長者原工場で現場に搬入できる最大サイズまで製造する工法。現場作業を短縮するとともに、作業環境のいい工場での加工で品質も向上させている。
ISO取得の審査前にはポンプユニット生産のピークと重なるなど多忙を極めたが、工事部の結束で乗り切った。同社ではISO取得を社内の体制強化策と位置付けており、高橋社長は社内報や給与袋通信で「将棋の歩兵のごとく一歩一歩確実な進歩」を呼び掛けながら、顧客満足度の向上を目指している。
同社年商は六十三億四千万円。尾道国際ホテル、尾道ロイヤルホテルも経営、従業員は二百六人。
アオイ洋紙(株)(尾道市東尾道10-35、資本金八千六百十万円、小島健知社長、TEL0848・20・3366)は昨年十二月四日付で環境マネジメントシステムのISO14001の認証を取得、環境に優しい事業活動を本格化させた。
認証を受けた事業は洋紙、板紙及び紙製品の卸売販売。尾道本店と福山市店が認定範囲。対象従業員数は三十七人。広島本店は昨年合併したばかりのため今後の範囲拡大を計画している。審査機関は日本検査キューエイ。同業種での認証取得は県内二番目。
環境マネジメントシステムは地球温暖化を防ぎながら、事業活動を行っていく取り組み。具体的には販売する洋紙の中で、古紙パルプ配合率七〇%以上のエコマーク商品、ケナフなど非木材パルプ使用の製品、植林など適切な森林管理を認証するFSC森林認証を得た森林で生産された製品などの普及に努める。同時に社内では責任者を明確化させ、紙の焼却処理がゼロとなるよう分別を徹底させ、営業車両の燃料使用量も最少となる道順管理も行う。
同社は認証取得へ向けて平成十四年十月キックオフ、小島浩章取締役を中心に準備を進めた。今後、従業員への徹底、取引先への提案を通じて環境保全を積極的に取り組む。
甘草、ステビアなど天然抽出物製造の丸善製薬(株)(尾道市向東町14703-10、資本金一億二千五百万円、日暮彰文社長)は二十六日、尾道市美ノ郷町の広島県営尾道流通団地に進出する立地協定を県、市と結んだ。
進出するのは尾道流通団地の第二工区。一万六千平方mを取得、平成十七年十月ごろの稼動予定で化粧品原料などを製造する新工場を建設する。さらに十九年一月末までに隣接する七千九百平方mを取得する予定で、追加用地も協定に含めた。
同社は本社工場、尾道西工場、三次工場(三次市)を持ち、尾道流通団地は工場の四カ所目。これまでの工場ではISO9001(2000年版)を取得しており、ほかに平成十二年に建設した総合研究所(翌年増設)が新市工業団地内にある。
約四十人の従業員を予定する新工場では世界的な需要拡大が見込まれる植物抽出エキスなどを生産する。
同社の平成十五年三月期の売上高は百八億六千万円、従業員数三百二十人。オーストラリアに甘草を生産する約九十万坪の自社農場も持つ。
尾道流通団地は同社を含め二十社が進出。一、二工区合計十八万七百平方mのうち九万七千平方mが分譲(協定)されたことで、分譲率は約五四%となった。
誘致を熱心に働きかけた尾道市の亀田良一市長も市内の超優良企業が下した地元重視の英断に経済同友会尾道支部の互礼会席上でも感謝を表明、進出を喜んだ。
大日本印刷(株)(東京、資本金千百四十四億円、北島義俊社長)は、昨年八月から三原工場(三原市沼田西町小原73-1)に、第五世代向け液晶パネル用カラーフイルターの新工場建設を進めており、三月の稼働を目指しているが、第五世代LCDパネルの需要が予想を上回るスピードと規模で伸びていることから、三原工場内にさらに新ラインの増設に踏み切る。一月二十日発表した計画では、現在建設中の第五世代カラーフィルター一期ラインに隣接する土地に、約二百五十億円を投じて新たな建屋を建設し、第二期ラインを導入する。
工場規模は鉄骨造り二階建て、延べ床面積二万六千二百平方m。一一〇〇mm×一三〇〇mmサイズの第五世代ガラス基板に対応するもので、十四インチ液晶パネル換算で月産九十六万枚の生産能力を持ち、十一月からの稼働を目指している。
今回の第二期ラインも、第一期同様に需要が拡大している大型液晶テレビ向けの、液晶滴下方式対応の柱状スペンサー技術、IPSやMVAの高視野角技術、高コントラスト技術など多くの仕様への対応が可能となるラインを構築する。
第五世代LCDは韓国市場や台湾市場での設備増強や今年後半からは中国市場でも新設が続き、カラーフイルターが不足することが予測されている。このため、LCDパネルメーカー各社が競って第五世代カラーフィルターの生産増強ニーズを強めていることが背景にある。同社でもこれらの状況に対応するため第一期、第二期ラインを相次いで増設することを決断した。この新ライン決定で、三月に稼働する三原工場や第一期ラインと台湾での出資会社の生産を含めると第五世代向けLCD用カラーフィルターの生産能力は月産二百十万枚(十四インチ液晶パネル換算)になり、大日本印刷グループ五拠点全体の生産能力は五百七十万枚(同換算)となる。今後も多様化する顧客ニーズに対応して、生産性や高品質化、高機能化するカラーフィルターの新技術開発とともに安定供給と第六世代以降の生産体制への布石として整備を進める。
この三月末で日用雑貨卸、(株)サンビックの名前がなくなる。といっても同じ持株会社の下でそれぞれ活動していた四社が四月一日に合併、売り上げ四千億円の巨大企業「(株)あらた」に生まれ変わる過程での話。しかし合併と同時に進められている合理化で、尾道市にある(株)サンビック広島東部支店もなくなり、県東部は広島支店の営業エリアとなる。
(株)サンビックの副社長を務める廣川英一氏もこの合併を機に引退、四千億円企業の大株主としてさらなる飛躍を見守ろうとしている。
さかのぼれば、尾道市内で最も早く百億円企業の仲間入りしたのが日の本商事(株)。父親から年商六十七億円で社長のバトンを受け取り、廣川英一社長が拡大させた。日本経済のバブルが崩壊、不況が深まりながらも、真の原因が日本経済の構造的ゆがみだとは、まだ地方の誰も本気で考えていなかった。そのころから廣川社長は本気で動き始めていた。
地方企業にあって、オーナー社長の心地好さは語るに尽きない。それを投げ打って企業のあり方、社員の将来を真剣に考えた決断は、合併を繰り返し、日本一の企業体に自らが営んできた卸という業態をつくり変えることだった。その結果が日本の雑貨卸業の再編を主導する人生となった。同級生には経済の荒波を陸から眺める医者や公務員の人もあり、「自分の城がなくなり、寂しくないか」といった反応もあるという。しかし大きな経営環境変化を肌で感じている商売人からは先見性、決断力を学ぼうと講演依頼も飛び込んでくるほど受け止め方も違っている。
日の本商事(株)は平成八年八月には山口に広島市の同業者と共同で物流センターを建設。同業ながら組織が違う企業との付き合い方を模索し始めている。
年商百二十億円ほどのころだった平成十一年五月に九州地区の日用雑貨卸業者と運送業者の十社が合併して生まれた(株)サンビックと合併。廣川社長は副社長に就任、さらに合併を加速させている。翌年、岡山の天生堂(株)と合併、昨年は鳥取県の(株)サンショーと合併、九州、中国地方をすっぽり営業エリアに収めた。
一定規模に拡大すると、今度は別地方の同規模同業者と交渉開始、(株)サンビック、伊藤伊(株)(名古屋市)、ダイカ(株)(札幌市)、徳倉(株)(徳島市)の四社が持株会社、(株)あらたをつくり、十四年四月には(株)あらたを店頭上場させている。十五年三月期の連結売上高は三千八百八十六億三千六百万円、連結利益五十三億九千三百万円を計上している。
廣川英一氏は(株)あらた(資本金五十億円)の一・二三%に当たる六十七万三千株を所有、個人では四位の大株主となっている。ちなみに利益処分は一株につき十二円の配当。
広島東部支店の社員は広島支店と鳥取支店への配置転換で対応。役付取締役の定年は七十歳。再編の最前線をひた走った廣川氏も今年一月にその七十歳を迎えた。年商百二十億円、六十五歳だった日の本商事(株)社長のときに大英断を下し、四千億円企業を生むまで劇的改革の一端を担った男の花道は、わずか五年間に集約される超スピードだった。(J)