でべらのまち尾道
で べ ら
11月になると尾道では「でベら」の季節に入る。海産珍味を販売する土産店の軒先にも縄を通した「でべら」がぶら下がり、商店街あたりには荷車を押すでべら売りのおばちゃんがやって来る。
尾道には、お歳暮として遠くの親戚へ「でべら」を毎年送っている人も多い。昔は日常の食卓料理だったが、珍重されるにしたがって今では高級贈答品の一つになっている。昭和2年には昭和天皇に「でべら」が献上された。その時は刺身だったそうだが、「美味」の一言があった…と吉和漁師の間で語り継がれている。 |
■「でべら」って何?
300年の歴史を持つ「でべら」は「タマガンゾウヒラメ」のことで、干したものも「でべら」と呼ぶ。俗に「出平鰈(でべらかれい)」と呼ばれるが、魚の種類はヒラメ。「でべら」は「でびら」とも呼ばれるが、「デメヒラメがなまった」という説と、手の平を広げたような形から「手平」と呼ばれたという説がある。
瀬戸内海では一年で全長7〜17センチに成長、11月20日から2月末までマンガー漁法と呼ばれる底引き漁が解禁となり、尾道の吉和漁師を中心に漁が行われる。
でべらは内臓を出して、塩水で洗い、冷たい潮風で3、4日干してつくる。大寒のころが一番の食べごろ。
■でべらを売り歩く後藤のおばちゃんに聞いた正しい「でべら」の食べ方
(2)焼く
小さいでべらは金槌でたたき、背骨を砕く。大きいものはそのままあぶるように焼く。ここで絶対に注意しなくてはならないことは、あぶり過ぎないこと。おばちゃん流に言えば「ほんまにそのぐらいでええん?」というくらいが丁度いい。
大きめのでべらはここでワンポイントアドバイス。写真のように料理ばさみで背びれ、腹びれと頭を切り落とす。残った身をあぶり、頭の方から三枚におろす要領で、骨と身を剥がすと簡単に身だけになる。
切り落とした背びれ、腹びれはフライパンであぶり、ミキサーで粉にし、漬け物などにかけて食べるとこれまた美味。無駄がない。
あぶったでべらはしょう油、ミリン、砂糖でつくったタレか、ポン酢で食べる。マヨネーズや七味も好みで加えるといい。
(2)唐揚げ
焼くのと同じ要領。唐揚げもサッと軽く揚げるのがコツ。大きいものは骨から身を剥がして食べる。タレも同じものが合う。
(3)酢の物
あぶったものをはさみで細かく切り、大根、人参の千切りと混ぜ合わせ、三杯酢で食べる。でべら独特の香りが酢と合わさり美味。
(4)天ぷら
中、小のでべらを使う。金槌で骨を砕き、天ぷらにする。
(5)茶漬け
焼いたでべらをほぐし、ごはんにかける。わさび、塩、のりをかけ、熱いお茶を注ぐ。でべらのだしは甘く、わさびとのマッチングが美味。
さらに贅沢な茶漬けは、焼いたでべらをすりつぶし、焼き味噌と煎り胡麻とですり合わせる。これをごはんにかけて食べる。これはお勧めの一品。
(6)でべら酒
フグのヒレ酒と同じ要領。吉和漁師秘伝の酒。焼いたでべらの尾ひれ部分(少し身をつける)を熱燗に二十秒ほどつける。甘みがあり、マイルドな口当たりになる。好みで塩を一振りしてもいい。
■でべらの買い方
販売期間は11月下旬から3月ごろまで。市内の海岸通りなど海産珍味のお店で売っている。最近は冷凍技術も発達し、販売期間は長くなっている。時期によって価格が違い、正月前は高い。通常は特大18匹で3千円ほど。